夏/葉leaf
 

夏の夕方に訪れるあの湿った憂鬱は何なのだろう。世界がいつもと異なった網の目に組み替えられるような、あの憂鬱は。目を楽しませてくれていた植物も奇怪で滑稽なものに思えるし、耳を楽しませてくれていた蝉の音も耐え難いノイズに聴こえてくる。私と世界の関係が生み出す透明な球体に、へこみや着色をもたらすのが夏の夕方である。

幼い頃、夏の夕方になると、世界が滅びるのではないかという不安に襲われたり、遊び過ぎて両親に済まないという気持ちに襲われたりした。夏は自然の一つの高揚であり、その高揚が速度を持って濃さを増していく時間が夏の夕方なのだ。夏という自然のネットワークが、私との関わりにおいて大きく傾き距離を
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