変心/寒雪
 
は消える煙を
無表情なまま見送ってから
いったいどれだけのオリオン座が
東から西へと逃避行する様を
追いかけたのか
後悔などはとうの昔に
ぼくの元からいなくなってしまって
悲しみすら感じられないぼくの心の中には
あの日の情景が
なんの意識も持たずにただ
不意をついて現れるだけで
古い映写機から流れるイントレランスを
スクリーンで眺めていても特に
なんの感情も持たない
そんな風情でしかない


いつの間にか
もしもだとか
ああすればだとか
かもしれないだとか
小学生が習う言葉を
忘れてしまった
それなのに
いつか二人で見た
暮れていく太陽に
浮かび上がらせられた
街の悲しみが奏でる色を
こんなにも鮮やかに覚えている


見上げる星は
昨日と変わることもなくて
今日も夜空は
冷えた心を抱えたままで
ぼくたちの佇まいを
飽きもせず見下ろし続けるのだろう
ぼくが抱え込む
無慈悲な持ち時間はいつでも
平等に一刻一刻減り続ける
そのことだけは
心を強く締め付けるというのに

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