ふりだし/葉leaf
 
一連の出来事には全て生命がかかわっていた。生命は動かすことのできない定点のようなものであり、私たちはこういう出来事のたびにふりだしに戻るのだった。遍く存在する定点である生命というふりだしに。生命は極端に美しいと同時に極端に醜い。それは美醜の対立を超えた著しい強度を持っている。あらゆる互いに矛盾するものが、生命の中ではその矛盾のまま同居しており、それゆえ人は生命を衣服で隠そうとする。ちょうど自分の皮膚を衣服で飾るように。葬式も結婚式も出産祝いも、あらゆる儀式は生命を隠す衣服に過ぎない。だがそのような衣服で隠しても生命の威力によって私たちは激しく泣き笑い喜ぶのである。

生命というふりだしに私は今朝佇んでいる。私は今激しい恋をしているのだ。相手の欠点を挙げ立てたり、相手を憎んだり、そのような衣服でごまかそうとしても無駄なのだった。私の恋はふりだしで滾っている。そしてこの恋が失われるとき、再び私はこのふりだしで激しく泣いているだろう。


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