夏の午後/寒雪
 
夏の暑い午後
ぼくを見下ろす太陽


日傘もささずに
火傷したアスファルト


行き先の縄張りを
我が物顔で主張する陽炎


流れ落ちる汗がぼくのこころから想いのかけらを
奪い去りこぼれ落ちていなくなってしまって
すっかりぼくのこころの中はがらんどうになって
そこにいる自分がすっかり色あせてしまって


遠くで聞こえる
ばらまかれた打ち水


自分の耳にだけ
しめやかに伝わる吐息


見上げた空に
慌ただしく駆ける雲


失って
失って
失って
それでもまだこの世界をしっかりと踏みしめるぼくの足
汗も出なくなってすっかり乾いてしまったシャツを
触ってみるとやっぱり手触りを感じてしまうぼくの体
もうすっかりなにもかもなくなってしまったと思っていたのに
いまだ考えるのをやめずにとどまり続けるぼくの気持ち


夏の暑い午後
太陽の下をやっぱり歩いているぼく
助けにならないそよ風が
おぼつかない足取りでぼくの後についてきた

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