はやにえ/
 
めて彷徨う
中折れ帽をかぶった新聞記者たちのストロボが
彼女のスイッチを入れて痙攣を引き起こす
受胎告知を聞くことなく水没していくマリアだ
刺青に飾られた千の腕が彼女を王国へと導く
それは卒業のしゅみれーしょん(なぜか変換できない)
懐かしい葬送の歌に目を開いてみると
そこは安葉巻の臭いが立ち込める告解室
東と西の壁には大きな合わせ鏡があり
その中では秒刻みにスライスされた
幼女から老女までの彼女が
互いの存在に気付くこともなく
曖昧な笑いを浮かべて走り続けている
黄昏と黎明の狭間が朧気に光るのが見える
急がないと腹腹時計が完売してしまうから
頼りない世界をひたすら走れ
行き先も目的も忘れ果て
肉体すら置き去りにして
ゴールは目前
そう、その先
そこの角を左に曲がると
寛解です



※以前に『もとこ』名義で別の詩投稿サイトへ投稿したものです。
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