いつか、降る/千波 一也
いつか、降るだろう
雨とは呼べない
くるしい水や
雪とは呼べない
つらい花弁が
いつか、降るだろう
きっと
だれもが望む形は
思いがけずに
姿をかえて
しまう
おそろしいものたちと幸福は
些細にしか違わないのだろう
だれもが望む形は
だれもが忘れてしまえる形
だれもがかえてしまえる形
嘘も真実もなく
終わりも始まりもなく
だれもが平等に
描けてしまう
語れてしまう
だから、降るだろう
星とは呼べない
あわれな営み
月とは呼べない
うつくしい陰
こころ当たりはないか
きみに
きみの周りに
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