「ちいさな錯覚」/泉由良
ら黄身が壊れて
なんの因果であろうか思い巡らす
罪が多すぎてわからなくなってしまった世界
いつからこの場所に立っているのだったか
周りを見回すと辺りは焼け野原
空は相変わらず無の色で世界にフードを被せ
夢のなかなら五秒で斬り捨てるインヴェンションを
希望という蝋燭を頼りに繰り返し探すサクセッション
目玉焼きをどうぞ
黄身もきっちりと固焼きです
そして今はキッチン
壁に掛けた版画とおはなしをしていました
揚羽蝶が飛び込んできて
慌てて蝋燭を吹き消した
うす昏い空間のなかに私と蝶々が居るのだと思うと
恐怖に身が凍る
のぞんだものはちいさな錯覚
何も考えず過ごしても良いような気がしてしまうほど
幸福の雨が糸のごとく降っていると
そう思って心が宙返りするような
空を眺めて眉間に努める
午後四時半の短針は折れた
目玉焼きをどうぞ
黄身もきっちりと固焼きです
初稿20090422
改稿20141008
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