シグレタ/赤青黄
い町だから、窓を開け放っても、雨は上から下に落ていくだけなのでほっといても構わない。私は、父の隣に座るとそのシワだらけの左手に上に右手を重ねた。父の皮膚はあまりいい匂いがしない。昨日家族でみたサザエさんを思い出していたみたいで、目には涙の跡がついていた。息を荒げていたから、重ねていた手で背中をさすってあげたのだけれど、どうにかなるわけでもなかった。そうだねああそうだねなんて紅葉は美しいんだろう、また皆で見に行こうねっていうしかなくて、僕が生まれた日に植えた栗の木が実ることは、もうないのに。
カレンダーの絵は毎日変わるのに、時計の鐘は雨に邪魔されて鳴らない。人々は家の中で愛を語らう、安いカプセ
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