悠 遠/朱雀
 
ビョウと突き刺す風越しに

ふと目に止まる時のうねりが

凄凄とした瞑色に身悶え―――


弥立(いよだ)つ躰と裏腹に

凝らした眸に赫(かがよ)う影は

象牙の塔に姿を変えて

『此処へおいで』と甘言を吐く


喜懼(きく)に揺れる心裡を探り

僅かに遅れた足の運びを

其奴が見過ごす筈はなく・・・

『お前はいつもそうだね』と

侮蔑混じりに ただもう一度

ビョウと響動(とよ)もし掻き消える


其の名は闇の詠うたい

識閾(しきいき)に立つ我を哀れみ

ただ気紛れに姿を見せる

いつか わたしはお前のもとに

辿りつく日が来るのだろうか?

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