無理/
和田カマリ
ギザギザの鋏が切り分ける
夕暮れ時の空と山を
営業車に乗って
ただぼんやありと見ていたら
早く家に直帰して
キッチンに立つ妻を
背後から抱きしめたくなった
フロントガラスの映像が
ほとんど白黒になった頃
いつもの場所に路駐して
小走りに急いで
マンションの鍵を開けた
おかえり
とか
暖かめの言葉を期待していた
しかし
真っ暗だ
メモが置いてある
さようなら
こうして
若い妻は出て行ってしまった
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