スミレ/藤原絵理子
自分の骨を見た詩人がいた
群れると空気が支配する
集団の最大公約数は愚劣である
集団の最小公倍数はサロンである
詐術をかけて誑かすのは容易
いともたやすく右に倣い左に靡く
風にうねる芒の原なら美しいものを
死臭を放つ末期患者
持ち上げようと震える腕を見て
気取った帽子のランボオに何ができるか
白い陶磁器の小皿から
菫の砂糖漬けを
摘み取る婦人の手
ああ
また今朝も集団の各人が
暇にまかせた戯言を囁き始める
ざらめ雪に埋もれて春を待つ
小さな菫の濃い紫を
洒落た長靴で踏み潰しながら
右に倣って微笑み
左に靡いて笑いさざめく
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