散歩/和田カマリ
 
濡れた暗闇を放射する
硬くて厚い椿の葉群
静かな時間になって
森の奥へと僕を誘う

ポトリポトリ
夜の壁から剥がれる様に
甘い紅白の花が落ちる
落ち続けて
踏まれ続けた花は
乱れる

やがて椿の隧道は
空を被う竹篭となり
私の散歩道は
少し明るくなった

竹の花が咲いていなければいいと
僕は恐れながら歩いた
何かが終わる前兆だと
人に聞いた事がある

程無くして
両手で泳ぐように
竹の隙間をこじ開け
脇道に逸れて見ると
明るい曇り空の下
そこには松林があった

僕の背丈ほどの松が
ぎっしり育っていた
それより大きいものは
あまりなかっ
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