コップ/末下りょう
 

その日は仕事仲間とメシを食い、それからキャバクラとガールズバーをハシゴして解散した。帰るにはまだ時間は浅く、テキトーに飲めそうな店に入ってみた。コートを着たままカウンターに座りメニューに目を通して、コロナとピスタチオを注文した。そのときグラスを拭いていたバーテンの顔に見覚えがあることに気づき、お久しぶりですと声をかけた。バーテンは僕の顔を注意深くのぞき、おぉ お前かと言った。不精ヒゲがよく似合っていた。バーテンはコロナ2本とピスタチオをカウンターに置いた。木目のカウンターには客が刻みつけた文字や数字やロゴマークが不安定なバランスで共存していた。2人で乾杯をしてお互いに瓶の半分くらいを胃に流し込
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