今日ナイキのスニーカー/番田
歩いていく道に誰かの姿がうかぶ。誰もが、しばらくして消えた。僕は続く草いきれの中を歩く。遠くに昔通っていた学校が姿をあらわす。僕は日々いじめられていたのだと、唇を噛みしめる。演劇の役者が思い出されるほど悲しい顔をしていて、クラスメイトからの暴力を受け、遠くに揺れる五本のポプラの木を見ていた日を思い出す。木は、今も小さな公園で風に揺れているのだろうか。
僕は便りのつきたアパートの一室で、死んだ友人のことを一人で思い出す。短い人生の中で、彼が世界に残した物はどんなものだったのだろう。そしてチラシや本の中に感じる、確かな手応え。感覚できるものだけが存在する僕だった。そういった実感は得難いものだ
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