人と蛇の寓話/まーつん
この身体の中で
貪欲な息づきを見せるのは
悪しき意図を紡ぎたすこの脳と
悪しき言葉を吐き出しては
奴の耳に注ぎ込む
この舌のみ
蛇だった過去の身の上を忘れて
人の世に一喜一憂し始めた
奴の魂を見るにつけ
私は思うのだ
人間とはいいものだ
どれだけ豊かになっても
満たされない穴を抱え続け
暖かい家の中にいても
その心は寒さに震えている
だから彼らは
内なる荒れ地に
枯れ木を積み上げ
それを囲んで手を繋ぎ
輪になって踊る
意志の力で
火を起こそうと
試みて
いつか私も
彼らに加わり
愛という名の幻に
踊らされてみたい
かつてのように
もう一度
だから、今は
悪知恵を忘れた奴の耳に
生きる術を囁きかけてやるのだ
いつの日か
奴の口から這い出して
もう一度
陽の目を見るために
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