おりがみ くらやみ/芦沢 恵
薄暗いその部屋で わたしの足にそれは抵抗した
拾い上げると白いおりがみ
おりがみだと思い込んだのは それが真四角だったから
左下に気持ちの悪い折り目がある
不幸なことに 左下
拾い上げを間違えた
右上に拾い上げる手だってあったのに
折り目からは くらやみにくらやみを染める液体が
とめどなく流れ出して
それをすくい止めようとする自分の手さえ見えなくなった
白いおりがみが 宙に浮いている
もはや自分の手がそのことに かかわっているのかどうかさえも
わからない
わからないまま わたしはその場をはなれてしまおうか
「去るのがアンタのためだしね」
おりがみつぶやいたよ
くらやみはだまっていたのに
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