心の目が開くと/いねむり猫
 
心の目が開くと
世界を流れる時間が 減速する

親しんでいた散歩道の背景から 
隠れていたものたちが 押し寄せてくる
 
バス停を囲む 豊かな街路樹の葉たちが 
輝く葉脈の意味を 語り始め

好き勝手に太陽へ背伸びした木々が
数十年分のうめきを 開放して

その時
私は乾燥しきった枯葉のように 粉々に飛び散る


心の目が開く


世界の中心が ばらばらに拡散して
それぞれの主人公の元に 送り届けられる

私は 自分の居場所だと思い込んでいた 
この場所から 退場する

残るのは 心地よい 身軽さ

それぞれの主人たちが 
思い思いに身震いし
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