空にさよなら日記/八男(はちおとこ)
用で情けなかった。だからこの本(ノルウェイの森)は開きたくない。村上春樹はいい!と大勢の知人から勧められていたが、少し開くと、なんだか嫉妬深い感情しか生まれない。ぼくには到底無理で、何か嫉妬が絡む生き方なのだ。しっくりくる人は読み、そうじゃない人は読まない。それだけのことだ。しかし一回もちゃんと読まないままではなんだかさみしいから、知らないまま突っ張るのもしんどくなって『ねじまき鳥クロニクル』という文庫本を買って、いつもズボンのぽっけに入れていたことがあり、一日に二行ずつ、じりじりと読んでいた。
七ページほど読んだある日、琵琶湖湖畔のぼっとん便所での最中に、ジーパンのお尻の右ポケットからす
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