蝶の夢/人の形した生き物
 
乱雑な色彩に紛れた美しい蝶
鈴のように澄んだ歌声は皆を惹きつけた
キラキラとした鱗粉をまとい、
ゆらゆらと魅惑する舞を皆が愛した
幸福を囁き癒しを与える蝶もまた皆を愛した

そんな平和がぐらりと歪んだのは間もなくの事

国王が蝶の噂を耳にした
街に不穏の色が漂う
王の命を受けた兵士による蝶の捜索

気紛れな王はきっと飽きたら蝶を殺してしまう!

街の人々は蝶を隠し、守り、次第に追い詰められた
怯える蝶の肩を抱き皆は口々に別れの言葉を連ねた
兵士を欺き蝶を街の外へと連れ出し
砂漠へと解き放つ
僅かな食料と水を持たせて
幸せであるようにと祈った

一人街を出た
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