utaha/まきしむ
 
まだそうやって歌を歌っているウサギが森の中で狸の横にいる
俺は昼食を食べたあとでうつらうつらして、太鼓を軽く叩きながら空から
たくさんに降ってくる光をあび、威勢のよい植物のようなこころもちで
あたりのどうぶつや、木の葉の揺れを通じ伝わる海からの振動を、
指の先に感じていた

脳みそのなかに細長い金属を通したが
歌われるメロディーは硬質だった
そうやって次第にわたしは作り替えられていった
霊と関わりを持つようになっていった

歌はいつの時代でも、純粋な気持ちを持ってさわると、
納豆のねばねばのような、ひかりを発する
それが例えばわたしがあなたが日中、忙しく洗濯をしたり
窓を拭いている時、急なお客さんに頭を下げているとき、
胸の、頭の中の盤の一枚下で、うねりを作っているのがわかる

うたは大いなる心そのもの
うたは大いなる慈悲そのもの
うたはあなたとわたしの間にかかる橋
うたは空から落ちてくるうた
ひかりの束、宗教

うたは流される涙
うたは溢れ出る血
うたは忘れられた思い出
うたは埋められたタイムカプセル

戻る   Point(0)