社会/
 

散々道に迷った挙句
歩き疲れて入った 小汚い木造の食堂
おばちゃんのシワだらけの手が空いた皿を下げていく
おばちゃんは俺の目をチラッと覗くと言った

あんた
社会とはなんて アリストテレスみたいに考えてみたって
何度も同じ道を歩かされて疲れるだけ
色々な人が色々なこと言って事を難しくしたがるけどねぇ

おばちゃんはコンロの上に置いてあった鍋を開ける

覗いてみれば
湯気の向こうに雑多な食材が放り込まれた 何が何だがわからないスープ

海からきた物もあれば
山から来た物も
不揃いな僕らは一つ鍋の中

「一口飲んで見な」としたり顔でおばあちゃん
オタマから直接すすってみると
「あっ 美味い」

それぞれの持ち味染み込んだこの世は見た目が悪くてもやっぱり美味しいスープ

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