審判の日/和田カマリ
 
屋根に大きな聖書のオブジェを載せた
中古の黒いトヨタ・ハイエース
後部硝子一面に赤いビニールテープで
「死後、裁きに会う」と貼り付けてある

第二阪奈道をホーンを鳴らしながら
狂おしく大阪方面に疾走している
防音壁を越え梅林に木霊する音

俺のヒュンダイを軽くパスすると
生駒トンネルのぼんやりと黄色い光線の中に
ダーツのように突き刺さっていった

瞬間だったけどその運転席には
能面の様な伝道師がぶつぶつと
何か言っているのが見えた

遅ればせながら俺も
生駒山をスカートめくりをするように
その薄暗い内臓にエントリーしていった

「なにをそんなに急いでいる?
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