雨糸/凛々椿
 
に残されて
会うたびに 
死なないでよ
と 
肩を引き寄せるあなたのぬくもりに私はいつも
後悔するんだ


ごめんね


ぽつり
ぽつん
頬を爪先を
空が濡らしはじめる
切らした息のように少しずつ
不規則に
降られてもいいように傘を持たせればよかった

ほんと気の利かない女だ
私は


ひとつ
ふたつと傘の花が咲き揃って 靄に
黒が
混じリ込む
指は
震え て


そろそろ
バス
は 空き地の前を通り
過ぎたのかな
近いうちに一緒に乗せてね
見てみたい んだ
あなたと赤いバスに乗って 早く
見せて
お願いだから早く
(気をつけて)
早く!
私は
(死なないで)
私は
いつかのやさしい言葉たちをのどに 震わせて
黒い傘の
まぼろしを 振り仰いだ



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