ロンサール/藤原絵理子
丘をのぼる石だたみの坂道でうずくまっている
ベレーをのせたあたしの夢 ただの酔っぱらい
指にこびりついているのは絵の具じゃない
細かい灰色の砂ぼこり 指の間から零れおちた砂の残骸
こんなところを彷徨っていたんだ
あたしは別れを告げたとき
ことば巧みにきみを欺いて
茶色いガラスの小瓶に閉じこめた
見えないように
あたしが二度と魅せられないように
あたしが二度とおぼれないように…
大きな枯葉を風がつまみあげて
ガサガサみっともない音をたてる
石だたみの上を引きずって降りていく
突然 あたしは気づくんだ
しまっておいた茶色い小瓶の軽さ
すっかり忘れていた間に
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