うみ/佐野権太
うみにくると
ふるさとに
かえってきたような
きもちになるのは
なんだろう
こくどうから
ながめわたす
ささーん ささーん
おおきくみえたはずの
うねりが
かたちをなくして
おだやかに
ひらかれてゆく
いしかいだんをふんで
はじめのすなを
あしうらに
かんじるときの
ゆるされるかんじ
とりとめのないことの
なにもかも
くりかえしのこきゅうに
やさしさがはこばれて
もう なんども
はこばれて
ねんまくに
しみわたる
ここには
うらぎるものが
なにもはない
ささーん、ささーん
ああ かえってきたな
とおもう
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