夜思/織部桐二郎
 
あやかしの雲を衣に昼の月
追ひて追はれぬひとの影かな


英京のたよりに遺す夏ひとつ
心おなじきかりそめの時


そのかみの文をうち捨てながむれば
君なくみつる月にもある哉


常世にも訪はばとはまし常夏の
花とぞたてる影のゆくへは


うつし身にあひ見ることのかたければ
よみ路のかげになか宿りせむ


幻の去りにし時を呼び返し
虹なす彼方倶にゆかなむ
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