至楽/織部桐二郎
 
巷を遠くわが宿に
来し方を返り見つつも
さいはひに充つるひと時
蓄音機ふと出だしたり


奏楽はいと珍らかに
泰西の忘却の曲
ゆくりなく求めたりしを
麗はしき協奏楽や


空想にライン古酒干し
いにしへのうた人だちと
語らひつしばし夢むや


ぴやの歎かふひと節に
魂ふるへつつ耽るなり
命の限りそのかみの声
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