二つの名前/殿岡秀秋
入学したての小学校の教室の机に
ひらがなで名札がついていた
その席に座ったら
ひとりぼっち
と風がささやいた
家に帰ると
オコちゃん
おやつがあるよ
と母に呼ばれる
近所の子どもたちと
石けりをしていると
次はオコちゃんの番だよ
といわれる
遊んでいる間
ヒデアキのぼくは
後ろでうずくまっていた
学校では
ヒデアキで
生きなければならない
ぼくはぼくのことを
オコちゃんと呼んだことはない
ぼくはだれかときかれれば
ヒデアキとこたえるしかない
家族や
近所の子に
当たり前に呼ばれているので
呼び名を変えてほしいと
言いだすことがで
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