からっぽ/寒雪
気まぐれを起こして
本棚を眺めていた
とある晴れの日
辞書のそばに
転がっている言葉
揺り起こしてみると
眠りから覚めた言葉は
おれに向かって
悲しそうにつぶやく
自分は
辞書に入りたかった
それを目指して
生まれた時から
日々人の口から
堰を切って漏れ出すよう
雨の日も風の日も
努力を怠らなかったつもりだ
だが
広辞苑はあんなに分厚くて
たくさんの仲間が
寝泊まり出来るほどの
収容能力を持っていながら
自分を辞書から
追い出した
どれだけ繰り返し
挑んでもはじき返された
自分は
少し途方に暮れているんだ
この先どうすればいいものか
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