time travel/藤原絵理子
組んで
粉の味がする紙カップのコーヒーを
女の子に薄いブルーのワンピースを着せたりしながら
ごまかしごまかし飲んでいる
上品な茶色の上着を着たおじさんが
ふと目の合ったあたしに微笑む
あたしもつられて微笑んでしまうけれど
視線の先にあたしの脚と胸があるのに気づいてしらける
余計なもの
小さな女の子だったら気づかなくてもいいこと
警戒心ばかりが一人前になっていく
適応…ふさわしくふるまうこと…過ぎ去っていくもの
発車の時刻が近づいて
ぞろぞろと出ていく一団の向こうに
白いポリ袋を下げた白髪頭の
父が急ぎ足でやって来るのが見える
この待合室だったら
首にキュッって抱きつけるかもしれない
過ぎ去った
なつかしい時刻が
電光掲示板の数字に
重なっている
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