ノマドワーカー?/動坂昇
ノマドは、ふだん牧畜や狩猟の手段であるものを、機会に応じて戦闘の機動力にいきなり転用して、領土の境界を侵犯していくかと思うとまた何事もなかったかのように牧畜や狩猟を営み始める存在なのであって、そのありかたはいわゆる「ノマドワーカー」とは違う。
「ノマドワーカー」が、ノマドのようにある日突然結集して指示系統も構成しないまま同時多発的に帝国の領土へ侵入していくことはありえず、むしろただエージェントにうまい具合に飼われている牛馬にすぎない。
かつてドゥルーズ=ガタリの生の哲学で練り上げられたノマド概念が、新自由主義市場から強いられる労働形態を美化するという欺瞞のために使われるようになってしまったのだとしたら、これほど皮肉なことはない。
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