easy/Debby
 

それからのことは思い出せない
ずっとむかしきみたちは、
この町まで歩いてきた。
町ができるときの音を想像してみるといい
積み上げられる石、塗られる壁
つながれていく金属
ずっとむかし、きみの兄弟たちは
ペンキを混ぜ合わせて
空をこの色に塗りたくった。

いつかぼくたちはみな、
ここから転げ落ちてしまうものだとして。
いつか、砂の中の足は波にさらわれてしまうものだとして。
もういちどこの場所からきみたちが
乾いた星に火をつけて
大きな音を立てて燃え上がる
こんなふうに、なにもかもが失われていくのなら
必要とされたセンテンスは、
言葉は。

たとえばきみたちは
こうすべきではなかったと思う
まちがっていた事柄の全てが
いつか僕たちはここからみな、
声も上げず転げ落ちてしまうものだとして。
あなたの言葉はなすすべもなく
小文字から始まってしまうものだとして。
街ができるときの音をあなたは
こもり唄にして育ったのだと。
空はこんな風に塗られたと
もうずっと昔の兄弟として。




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