深夜の東名高速で出会った鬼たちに憑いていく/ichirou
 
中一の長女の
突然の登校拒否

いてもたってもいられない

家に着くと
テーブルの上に破壊されたスマホ

LINE外しだか
何だか知らないけれど

俺の娘に何しやがる


すべて俺のせいだ

スマホを与えたのも
学校を選んだのも

そっとしておいてという
妻に諭され深夜単身赴任先に帰る

こんなとき
何の役にも立たない自分に腹が立つ

涙が止まらない

何をしているかも
わからなくなった



気がつくと
深夜の東名高速で鬼たちに囲まれていた

鬼たちは真っ赤な目を光らせて
俺の車を囲み
ある鬼は笑いながら
別の鬼は怒りながら

入れ替わり立ち替わり
俺の目の前に現れる

鬼たちは地獄への一本道に
俺を誘導するかのように進んでいき
いつのまにか前方の暗闇に吸い込まれて
消えていった

俺は鬼たちに
おいていかないでくれ
と念じながら

鬼たちの後を必死に追いかけた


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