嵐/白雨
 
後ろから剛い電気光線を受けた処刑場のクライスト、林檎は、祈りとも醜形恐怖とも取りうる微妙にずれた表情で光線に鮮やかな返り血を浴びた自分の姿を想像していた。執行するわたしの背後には黒い革鞄があってなかには手術道具と美しい木製の三角定規が入っている。この三角定規の使い途はわからない。わたしは女性用の細いシガレットを吸って時計を見る。

12時15分で、短針が細かく顫動している。

12月10日、手帳にはこの日付にアンクル・トムの詳細な描写がある。今日は12月9日で朝、日が昇るまでは12月9日のままだ。僕は平然とカーテンを閉めて手袋を嵌める。葉巻を選ぶときの要領でわたしは林檎を品定めする。

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