滞留のスケッチ/岩下こずえ
 



考えない葦の
川岸に
シグナルが、シグナルに寄りそって果てている

 /

敵意がないことが
わかる

横隔膜のへん
まず、そのようにして針をふるわせる
さびついた小さなメーターが
誰のものでもなく
異物で
わたしだった

 /

わたしだったもの、かつて、あなただった
町灯りが
てらしだした仕組み
去ったもの、どこへ、去るというのか
空に
出口はないのに

くらがりが
寄ってしまった

 /

通過する
水面に、まだ
あなたの世界のしっぽの静脈が透けている

うたず、うたひらくこともなく
夜の

 /

おもみも
なにもないぶぶんに
白い
花束が
似合っている

どうしようもなく
飾られている

 /

祝福された
つまずき
ひかりだけさきに歩いてゆく
ひくい視界

湿った
砂利にみちて




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