帰ろうという意志さえあれば 彼には道がわかるはず/Lucy
だ
僕は思う
だって逃げ出したのだから
彼は自由が欲しかったのだ
力試しがしたかったのだ
愛でがんじがらめにされた自らの輪郭を抜け
ここではない何処かへ
見たこともない自分を
探しに行きたかったに違いない
だがその代償は重い
今頃既に車にひかれているかもしれない
大型犬に出くわして
噛み殺されたかもしれない
それでも仔犬のために
祈るべきだ
その勇気を
讃えるべきだ
とそこまで考え
僕はちょっぴり馬鹿らしくなる
だいいち
そんなもん勇気でもなんでもないだろう
ただ無知なだけ
己の無力を知らないだけ
僕も同じなんだろうか
破れかけた雲を見上げて
もう何年も道に迷ったままの僕は
神様のことなんか思い出せない
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