いちばん君に似合う色/栗山透
 

君の首のまわりに
たっぷりと巻かれたストールを見ると
私は冬の訪れを感じる
いつ見ても思うのだけど
君はストールを巻くのが下手だ
タグが見えてしまっているし
形もなんだかイビツだ

うすいグレイとグリーンのストールは
一年前のクリスマスに私がプレゼントしたものだ
だいぶ生地がくたびれてきてはいるが
今でもいちばん君に似合う色だと思う
私は君とこうやって会うようになる前から
君に似合う色を知っていた
身体のまわりにほんのり漂って見えるのだ
グレイとグリーンのグラデーション
君は柔らかな色がよく似合う

君が仕事帰りに
ひとりで歩きはじめると
私は少し間隔を空けて後を追いかける
君がイヤホンを耳にはめて音楽を聴きだすと
私には君の色が見えるようになる
君が早足で歩くと君の色が
マントのように後ろになびくのです
私はそれを手に取って触ることができる
柔らかい 優しい感触
君のそのストールのように

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