音楽/葉leaf
人間であることを返却する前に
再び人間となることを予約しておく
すばやい林檎の色に待ち伏せされては
夜道を歩く闇の物思いにかすかに混じっていく
滲んでくる朝と縫い合わされるために
人間であることを浮動させるために
音楽は淋しく走り続け
この渦と地球との和音を引き締め
この岩と人間とのリズムを澄み渡らせる
見慣れた部屋もいつでも滝つぼになりうるし
住み慣れた土地もいつでも異国になりうる
そのような空間の変換にいつでも抵抗できるのは
積み重なる音楽のひねられた掟のみだ
広がりや色がなくても大きく鮮やかであり
都市が衰退し人口が減ってもますます生い茂るのは
死人
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