月唄 「朔夜」/龍九音
 
がった

蛍はゆらゆらとさらに舞い上がり
「暫く目を閉じてゆっくり開いてみて」
言われた通り瞼を閉じる乙女

次に目を開けたそこには蛍の灯火はなく
星の瞬きの中に穿ったような場所があった

「あれが今夜の月だよ」
いつの間にか肩に戻っていた蛍が言う
「そこには無いように見えるけど月はいるんだ
 ここにはいないけど
 貴女の心の中にいる彼の人のようにね」

乙女は驚いたように瞳を見開き空を見上げた
確かにそこに月あった
あの人が大好きな月が・・・

再び肩に目を向けた時
蛍の灯火はなくなっていた

「ありがとう」
乙女は三度空を見上げ微笑むのだった
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