月唄 「朔夜」/龍九音
 


夜の静寂に乙女が独り
両の手を胸に当て空を見上げている
星が落ちそうな程の瞬きの中
乙女の求めるものはそこにはなかった

ため息をつくように見ろした先へ
仄碧い灯火が一筋流れた
まるで空から降ってきたように

一匹の蛍であった
蛍は乙女の肩に停まり
「どうしたの?」と問いかけた

乙女は沈んだ瞳で
「無性に月が見たくて・・・」
と小さな灯火に応えた

「今日は朔だからね
 月の光は浴びることが出来ないよ」
蛍は残念そうに灯火を点滅させた

「そうだ・・・いい事思いついちゃった
 僕の灯火を追ってみて」
そう言い放つと肩から乙女の鼻先に舞い上がっ
[次のページ]
戻る   Point(1)