詩の構造について 詩と向き合う/葉leaf
 
ミツバチの午後 井坂洋子

恋人に会いにいくときは
緑樹の濃い反射がほしい
幾重にも層をつくる
日射しのプールの水面下
顔をあげると
ミツバチの唸りが耳もとをかすめる

肉体(からだ)は見境もなく
ほほえもうとするので
歩調をはやめ
輪郭のなかに肉体(からだ)を
おし込む
向かいの林は
だんだら模様の陽光のせいで汗ばみ
つりさがったハンモックから
蜜がたれている

どこかで輪郭がくずれたのだ
やわらかいところを出して
注入を受けている
双つの丘の
その中腹だろうか
ミツバチが無数の巣穴をあけているのは

(『マーマレード・デイズ』より)

 
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