檸檬/平井容子
 
不安なひとよ

柄に
アルミホイルを巻くのを
忘れないで
なまぐさい身は
ひとり青く
ナイフでこそげるには
やらわかいから


(らん反射してた
     たしか、
       あれはばかにしていた
           鳥の名まえも
             知らない
              わたし

 表皮、真皮、脂肪とはねて
 ちりばめられた茜いろの
  
  

音楽室で
はじめて聞いた
斜陽ってひびきが
なんだかすさまじかったから

 済んでしまったとは言えない、二度と)

どのまちかども
ぬぐえない水をひっかけて
家路をいそぐのは
もう
わたしじゃなかった



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