月唄 「十六夜」/龍九音
 


今宵は十六夜惑う月
月を抱きし龍もいる
夜陰に隠れし彷徨人
暫し佇み宙を見る

月を抱きし龍は言う
「灯りが欲しいか?
 月も惑ってるおるぞ」
声無き声で彷徨人立ち竦む

龍に隠れし月は言う
「惑いも迷いも諸人が
 進むための試練です」
静かに目を閉じる彷徨人

その時
一陣の風が吹き抜ける

月を抱きし龍が哭く
「我はまたくるぞ
 主の心に隙間ができたらな」

龍は去り 月が顔をだすと
辺りは仄かな優しい光で満たされた

今宵は十六夜惑う月
確かなものはなくとも
進むべき道は必ずある

彷徨人の瞳は開かれ
道標を見極めるべく歩み始めた

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