回遊図書/表紙/千月 話子
長く伸びた草野原が
風に揺れているので 波
転げ落ちた赤い実
踊るよ 上へ上へ
昨日 満開の花びらが
今日 空へ旅立つ色彩の吹雪
舞い上がる柔らかい湿度
甘い香りを連れて 一斉に
溢れる木漏れ日を掌 こぼしながら
常緑樹に秘密を話すよ 北欧の森で
唇に人差し指 掠れた声で
白い蝶が遊ぶ
絵本のページから
ひらひら と
掌で包んで元に戻そう
溢れる羽 頬に触れて
さらさら と 粉おしろい
この世界は白紙に戻るよ
遠い国から落ちた飛行船
百年で庭園 遊ぶ虫かご
誰にも捕まらない
花の影 赤へ青へ
言い表せない 色へ
百八十度 展開して
折り畳めない溢れる光り
閉じた目の奥に
知らない文字
生まれて 生まれ続けて
かたこと と 居場所を探す
くるくるる と 意味を変える
見つけ出すまで誰にも言わない
溢れる 右脳に
回遊の虹
跡を残して
添えた想いは頭上に浮かぶ
広がる道と 狭き旅人
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