ファーストダンスはわたしと/キキ
 

逃げてゆくよう金色の葉降る 喪った小鳥を探してしまう



決めることができないまま手を離し 昼夜を分かつひとすじの雲

夏の音が 暇つぶすため生きているような身体からふいに鳴るから

わたしたちずっと九月を生きている残照と空耳のルフラン



三十路過ぎ地図を持たずに迷い込むヴィヴィアンガールズの王国に

あやとりを交わす母たちのランゲルハンス島にて揺れるエプロン



われわれは野菜をかじる音だけで幸わけることのできる生きもの

唐突に≠(ノットイコール)の記号が浮かぶ きみと魚をたべたとき



台所のゆかに鈴がなりひびく もうすぐよるの雨 やってくる



喉の骨からアナナスが生えあなたを呼んでいる真夏の夜の夢

耳たぶの産毛をなでるあのひとのふうわりとしたたんぽぽ訛り



公園でフォークダンスをおどる輪に溶けこみすぎて消えた恋人

大銀杏の下で読んだ手紙 あれ葉っぱか小鳥ってことにする



-2010題詠マラソンより-
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