夜更け/月形半分子
タバコの煙りでかすむジャズ・バーで
憧れを飴玉のように口に含んでは
恋人達のようにキスをしたがる
少年たちの夜更け
青林檎味がお好きなのねと
薄墨色にふけるドレスをまとった
シンガーが笑う
ピアニストは、ただ、瞳を閉じて
朝の鐘の音が入り込まないように
鍵盤をシェイクしつづけては
月光のようにジンのなかにひとり溶けていく
いつの間にか、少年たちは店のすみで
飴玉に飽きた物欲しげな互いの唇で
睫毛を濡らしては歌を口ずさんでいた
レコードのように、時が止まり木で
ホロホロと酔いつぶれているから
扉は朝を忘れて夢心地のまま
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