キス (潔しとしない)/hiroto22
お風呂に入り、
湯ぶねで一日のことや、たあいもないことを考えていると、
いつの間にかうつらうつらしていた。
と、突然ハッとして目を開けた。
お風呂の蓋に唇が触れて、ドキッとして目が覚めたのだ。
目が覚める一瞬、ほんの僅かだけれど、何かを思い出すように
一瞬ときめいた気がした。
長いこと、そういうことには縁はなく、これから先もときめきなどとは縁がないであろうと、かなりの確率で自信はある。のに、
諦めていた筈だった。
歳を取ることを、
おばさんになることを、
潔しと決めていた筈だった。
なのに、
お風呂の蓋にときめく女がそこにいた。
戻る 編 削 Point(4)