秋/月形半分子
わってしまう予兆のように
飛行機が爆音をたてて真上を飛んだとしても
それが聞こえないのが牢獄
あの日、私は絶えず頬に触れていた一房の葡萄を、飽きることを知らずに食べつづけていた
突然、それが私のなかで蝋と化し口から溢れはじめたのだ
蝋は美しい日々の分だけ私に尽きることがない
八百屋にならぶ葡萄は色とりどりの尼の僧服
仏壇には誰か檸檬を置いて頂戴
夜になって雨が降り出すと
雨音が重い瀬音のように響くから
幼い姉妹は羽虫のように裸電球の下で寄り添い合う
十五夜を過ぎたらもう泣いてはいけないと
母の呟きが夜の雨にまじって降ってくるのだ
生き返ってくるように
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