エンドクレジット/飯沼ふるい
 
古くてチープな映画だった

老年の男が安楽椅子に座り
目の前の暖炉と向かい合っている
解きほぐされた火の中で
男の古めかしい回想が揺れている
男はじっと暖炉を見つめている

一匹の蛾が
明りに誘われてきた
火の腹がふくれて
黒いその影を包み込む

本能はくべられて
それきり
何かがここからなくなった

暖炉の火がぼやけて
次第に男の顔が浮かんでくる
深い皺の刻まれた老人の
物憂げな表情が映し出されるはずが
そこに佇むのは僕だった

エンドクレジットには
蛾も
むろん僕の名も
記されていない

もうじき夜が明ける
星を削ぐ朝が来る
蛾の死ん
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