七見ヶ桜駅前/凛々椿
いう音楽を流して店を開ける。
65年間この町に住む85才のシンドウ・モトは、4日に一度、6時きっかりにやってきて、
至高のブレッドを待つ。
もものきは、その日は6時半に開店する。
町の人はその日を「モトさんの日」と呼び、有志でモトにホットココアを差し入れる。
タケイ・ヨウの娘婿は、コーヒーの勉強のため、週に一度、喫茶芝生に通う。
ヨウの夫の某は、店の奥でバルタン星人の人形を抱きしめ、モモ、モモ、と撫でている。
某にとってバルタン星人はモモノリである。
息子モモノリは、今も17才のまま、隣町の寺院に眠る。
モモノリの墓前の花が毎日替わっていることに、ヨウが気づいたのは半年前のこと、
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